子育てがつらい。
もしかしたら育児ノイローゼかもしれない。
産後うつになったらどうしよう?
私はこんな風に、悲観的な気持ちになったことがあります。
赤ちゃんはかわいいし、楽しいことももちろんある。
でも、子育てはつらいこともたくさんありますよね。
そこで、子育てがつらいと思った経験のあるすべてのママに、セルフモニタリングというものを知ってほしいです。
セルフモニタリングとは、自分自身の行動や感情を観察し、分析すること。
聞きなれない言葉ですし、ちょっと難しそうイメージを持つかもしれません。
難しく考えずちょっとかじるだけでも心の負担を軽くし、自分を変えることができます。
子育てをする上で絶対に役立つし、知っておいて損はありません。
今回は、セルフモニタリングを使って子育ての悩みを軽減させる方法をご紹介していきます。
「子育てがつらい」そう思っているのはあなただけじゃない
子育ては、特殊な仕事。
人の命を預かる仕事でもあるし、子供のうんちやおしっこなどの汚いものを処理することも。
そうかと思えばご飯をバランスよく作って家族に食べさせなくてはいけないし、外で一緒になってやりたくもないボール投げをしなければいけないときある。
片付けても片付けても散らかされて、やらなければならない家事が溜まったりします。
「きつい」「汚い」「危険」の3Kなんて言葉がありますが、育児はまさに3Kだと思っています。
もう、やること考えることすべてがキャパオーバー。
今は男女が平等に家事育児を分担する時代ですが、まだまだそんな立派な習慣がついている夫婦は少数派です。
でも、やっぱりとつぜん糸がぷつんと切れたように、何にもしたくない気持ちになったり、泣きたくなったり、子供に怒鳴ってしまったり、叩いてしまったり。
感情のコントロールができなくなるときって、ありますよね。
女性はホルモンバランスの影響も受けるので、どうしても情緒不安定になりやすいのです。
子育てがつらいって思ったことがない人なんて、絶対にいません。
決してあなただけではありません。
みんな表向きは上手に子育てしているように見えますが、影では悩んだり泣いたりしているものです。
とても責任が重く、細やかな気遣いが求められて、体力が要る仕事。
責任・メンタル・肉体労働とたくさんの要素を持っているので、どんなに器用な人だって「もう嫌だ!」って思うことがあるはずなのです。
「子育てがつらい」と思う自分を責めてはダメ。
そう感じている自分の心を分析し、少しでも楽にこなせるように考え方を変えていくということが必要になります。
子育てがつらいと思ったらまず
- 夫に話す
- 実家に帰ってゆっくりする
- ひとりの時間を作って気分転換する
というような方法があげられることが多いですよね。
確かにその日一日は、ちょっと気分が晴れやかになって気持ちが切り替わったりするかもしれません。
もちろん、このような気分転換は大事ですし、生活に張り合いをもたらしてくれます。
でもそれは、ほんの少しの限られた時間でしかありません。
この先、子育ては何年も何年も続きます。
今子育てがつらいなら、そのつらい原因を探って根本から改善しなければ、この先もずっと同じような悩みに直面し続けることになってしまうのではないでしょうか。
そもそも、セルフモニタリングってなに?
セルフモニタリングとは、自分で自分自身を観察することです。
認知行動療法やの一種で、自分の行動や習慣、感情の変化を記録します。
自分自身の行動をより効率よく、良いものにしていくために行います。
セルフモニタリングが用いられる対象はさまざまです。
例えば、
- レコーディングダイエット
- ラジオ体操の出席カード
- 読書の記録
こんなものも、セルフモニタリングの一種です。
自分が継続していることや、成し遂げたい目標に向けてやっていることを記録するのです。
そうすることでよりやる気がアップし、もっと効率よくやるにはどうしたらいいか?ということが分かってくるのです。
また、こんな使い方もできます。
- 禁煙したい
- お酒の頻度をコントロールしたい
- 悪い癖を治したい
このようなやめたい習慣があるときにも、セルフモニタリングは有効です。
子育てや家庭の悩みでセルフモニタリングを使うときは、こっちの目的が強いかもしれませんね。
- 子供に八つ当たりしてしまう
- 家事のやる気がでない
- 夫にイライラしてキレてしまう
このように自分自身が良くないと思っている言動や思うようにいかないことに対して、記録をつけます。
やめたい行動、ついつい陥りがちな感情などを発見して記録していくのです。
すると、自分はどんな時にどんな行動をとっているのか。
またどんな気持ちになったときに、どの行動に出るのかを知ることができます。
例えば私の場合
私自身、平日の朝いちばんはとても気分がよくてテキパキと動き、子供にも優しく接することができます。
でも、夕方自分が疲れてくるとだんだんイライラすることが増えてくるのです。
私はただ単に、疲れているからイライラするのかと思っていました。
しかしそのときの状況を全て書き出してみると、イライラの原因は疲れだけではなかったのです。
- 上の子が外で遊びたいと言っている。
- 下の子はまだ赤ちゃんで夕方特有の「黄昏泣き」が始まる
- あと30分で夫が帰ってくる時間なので夕食の支度を早くやらないといけない
- キッチンのシンクに洗い物があって料理に取り掛かるのが嫌だ
- 洗濯物もまだ取り込んでいないから早くやらなくちゃ
ひとつひとつのことは、ゆっくりこなせばなんてことなく解決できることばかり。
でも「いろんなことがいっぺんに起こる状況」にイライラしていることが分かったのです。
もうひとつ例をあげると…
休みの日も母親は朝早くから起きて家事や育児をしていることがありますよね。
私も以前はそういう生活をしていて、休みの日に限ってイライラが増幅することが多くなりました。
朝早くから子供が騒がしく、粗相をすることも多いから私もイライラしてしまう。
最初はそう思っていました。
でもセルフモニタリングをやってみて気付いたのは、
「私がイライラするのは子供たちの世話が大変だから」
ではなく
「夫には休日があって母親の私にはない、その不公平さ」
にイライラしていることに気付いたのです。
子供からしたら、本当にいい迷惑です。
つまり、
「自分は何に対して不満を持ってしまうのか」
がはっきりするのです。
自分が怒りたい、泣きたい気持ちになるときはどんなパターンなのか、ということが見えてくるとそこからは変わるのも早いです。
「あ、私またこのパターンやってるな。」
「私は今、〇〇だからイライラし始めているな。」
「あ、そろそろあのイライラが来そうな状況だな。」
セルフモニタリングで行動記録をつけていると、自分を常に客観的に冷静に見ることが自然とできるようになります。
自分の中にいるもう一人の自分が
「ほらほら、またいつものパターンになってるよ。」
と教えて軌道修正してくれているようなイメージです。
こうやって、なぜ私は子育てがつらいのか、なぜ日々の生活がつらいのかを冷静に考えて、解決策をより出しやすくするのがセルフモニタリングの効果です。
子育てがつらい人にセルフモニタリングが必要な理由
セルフモニタリングは、紙とペンさえあれば今日から始めることができます。
どこかに出かけてお金を払う必要もありません。
カウンセリングなどのように予約して順番を待つ必要もないのです。
さらに、しっかり取り組めば効果も高く、自分自身が見違えるように変わります。
子育てがつらいと思うのは決して特別なことではありませんが、だからと言ってつらいままでいいわけではありませんよね。
子供に対して強く当たったり、イライラをぶつけたりしてしまうのは絶対によくないこと。
疲れが溜まったり、生活への満足度が低くなったりするとそのストレスはどうしても弱い立場に向けられてしまいます。
虐待って特別な人がすることだって思っていたけれど、誰にでもその可能性があって、自分自身もまた予備軍のひとりであることを、出産して初めて知ったという人も多いのではないでしょうか。
子供の心に与えられた傷は、一生消えないこともあります。
親の間違った対応は、子供の人生を大きく変えます。
あなたが子育てがつらいと思うことは、あなたのせいではない。
でも、子供のせいでもないのです。
子供が健やかにのびのびと生きていくためにも、母親の心のメンテナンスは絶対に必要。
自分の心に余裕がないと危機感を感じているのなら、それをそのまま見ないふりしないで欲しいのです。
また、夫に対しても同じです。
子供にぶつけられないイライラは夫にぶつけるという人は多いですよね。
もちろん大らかに受け入れてくれたらいいですが、夫はストレスのはけ口ではありません。
相談することや、話を聞いてもらうのは当然良いことですが、負の感情を夫にぶつけてすっきりさせるのは家庭不和の原因になります。
自分の行動と気持ちを一番よく知っているのは自分です。
決して自分だけで抱え込んで、一人で解決すべきと言っているわけではありません。
自分にとって一番身近な自分自身が、もっとも深く優しく心に寄り添うべきなのです。
環境や生活を変えたいのなら、まず自分をよく知って変わろうとする気持ちで動いてみましょう!
セルフモニタリングとカウンセリングの違い
育児ノイローゼや産後の疲労・ストレス、イライラなどのメンタル面での不調には「カウンセリング」が適していると考える人も多いのではないでしょうか。
もちろん専門家のカウンセリングを受けたり、心療内科で診察をしてもらったりという方法もあり重要なケア方法です。
しかし、これには向き不向きや医師やカウンセラーとの相性など、非常に障害物も多いのが実際のところ。
私は数年間カウンセリングや精神科治療に通った経験がありますが、正直あまり効果を感じられませんでした。
その理由は
- 自分の悩みを他人に話すことに抵抗があった
- 自分の気持を上手く言葉にできなかった
- カウンセリングルームや病院に出かけていくのが億劫
自分のことを話すのが苦手だったこと、また話が下手なので自分の本当の気持ちがカウンセラーに伝えられず、逆にモヤモヤした気持ちになることも多かったです。
特に小さな赤ちゃんや子供を抱えたママは、そういった場所に出ていくことも簡単ではないかもしれません。
カウンセリングを受けたい気持ちがあっても、子供の預け先や予約の手配などの手間も増えるため、先延ばしにしてしまっている人も少なくないのでは。
それに対して、セルフモニタリングは自分だけで今すぐ、紙とペンさえあれば始められます。
次の項目で詳しいやり方をご紹介しますが、必ずしもこのやり方通りに勧めなくてもいいです。
目的さえ理解できたら、あとは自分のやりやすいように応用したり、必要なことだけ取り入れてみてください。
それでは、セルフモニタリングの具体的な実践方法をみていきましょう!
セルフモニタリングのやり方
1. 日常活動記録
出典元:認知行動療法・認知療法の道具箱
日常活動記録とは、一日の行動を時間帯ごとに書き込む方法です。
上のような表に、自分の行動を書ける範囲で良いので書き込みます。
こんな行動の記録を書いてどうするの?
小学生の夏休みの宿題じゃあるまいし…。
そんな風に思う人もいるかもしれませんね。
自分の1日の行動を紙に書き出し、自分で読んでみるといろいろな発見があります。
「私、こんなに長い時間授乳してるんだ!」
「今日は掃除に結構時間使ったな。」
「昨日は夜泣きで全然寝れていないな。」
こうやって、自分の生活や行動が客観視できると、それに伴って湧いてくる感情や疲労などにも納得がいきます。
「全然寝られなかったから、疲れてイライラするのも当然だな。」
というように、自分の感情とその原因を紐づけしやすくなります。
最初はちょっと面倒かもしれませんが、産後のママは育児日記と一緒に自分の行動記録もつけていくと楽に実践できます。
育児日記には赤ちゃんの授乳や睡眠の記録をつける、時系列の表が付いていますよね。
ここに、ママの気持や行動の記録も書き込んでしまえばいいのです。
ポイントは、赤ちゃんん記録とは別の視点から「ママ自身」の行動を振り返ること。
(行動記録の表が欲しい方は、こちらのサイトからダウンロードできます。)
セルフモニタリングは、そのとき感じたことや起こった出来事を書き出して可視化することが大切です。
まずは、こうした簡単な行動記録で書くことを習慣づけてみましょう。
余裕がない場合は、その日の気分をマークや数字で表して記録するだけでもOKです。
とてもいい | ◎ |
まあまあ | 〇 |
あまり良くない | △ |
とても悪い | × |
こんな感じで簡単に書き込めるマークを決めて、カレンダーや手帳などに書き込んでみるものいいです。
大事なことは
「自分自身に向き合う時間」
「その日を振り返る時間」
を設けることです。
2.コラム法
コラム法(認知再構成法)は、日常行動記録に比べて深く掘り下げた内容の記録になります。
いつ? どこで? |
どんな出来事? どんな状況で? |
自動思考 (自然に出てくる感情) |
そのときの感情 |
自動思考の再検討 (違う考え方はできないか?) |
違う考え方をしたら感情はどうなるか? |
〇月〇日 自宅で |
【例】子供を怒鳴ってしまった。寝不足で私の体調が悪い中子供たちが同時に泣いて駄々をこねた。 | 子供たちをびっくりさせてしまった。怖い思いをさせて傷つけてしまった。 |
イライラ。 我慢の限界。 うるさい。 |
感情を出すことは悪いこととは限らない。 体調が悪いときは、ある程度の手抜きをしたらどうか? 怒鳴ったことは子供たちに謝って次につなげる。 |
後悔や自己嫌悪が軽減。 |
〇月〇日
|
その日あった出来事、そしてそれに対する感情を書きます。
出来事とは、ネガティブなものが対象になります。
- イライラして子供に「うるさい!」と怒鳴ってしまった
- カッとなって子供をつい叩いてしまった
- 疲れて家事が何も手に付かなかった
このようなネガティブなできごとに対して、そのときの時間や場所、状況、感情を正直に書きます。
こうすることで、頭の中でぐるぐる思い返すよりもより客観的に、冷静にその出来事を捉えることができるようになります。
最初は出来事と状況、感情を書き込めばいいでしょう。
だんだん慣れてきたら、その出来事に対して他にどんな方法があったか、最終的な感想なども付け加えていきましょう。
書くことが大変だと感じる場合は、項目を最小限に省いてでもいいと思います。
書き出して頭の中が整理され、気持ちが落ち着く感じが得られるようであれば、どんどん実践を繰り返してみましょう。
セルフモニタリングは1日や2日やっただけでは大きな効果は期待できません。
ネガティブな出来事や、子育ての悩みにぶつかったときに繰り返し実践していくことで、自分が乗り越えやすい考え方や行動の目安になります。
セルフモニタリングは子育ての強い味方産後うつや、育児ノイローゼ対策として、セルフモニタリングはとっても有効です。
そしてこの時期だけでなく、セルフモニタリングの習慣は一生使えるスキルになります。
子育てはこの先、もっともっと複雑になります。
単純なお世話だけでなく、子供の心に隠された問題を見つけたり、サインを読み取ったりと難しいことが増えてきます。
そういう複雑な悩みにぶつかったとき、また子供への接し方に迷ったときも、セルフモニタリングは有効です。
今回は、一般的に実際に認知行動療法で使用されている方法をご紹介しました。
しかし私個人としては、簡単に振り返りの日記をつけるだけでもいいと思っています。
手帳やカレンダー、いらない大学ノートでも、またはSNSでもいいと思います。
自分が記録しやすい場所に、その日の出来事と正直な気持ちを記録していきましょう。
- できごとや事実
- そのときの状況
- 感情
気付いたことや感想自分は子供や夫に対して、なぜそのような対応をとったのか。
そこにはどんな理由があって、どんなことが影響していたか。
昔学校の授業で、観察記録や見学記録を書いたときの形式と全く同じです。
子供の学習でも実践されるのは、より理解力が高まる効果が高いということ。
書き出して記録するのと、頭の中で考えるのとは、見えてくるものが全く違ってきます。
また、頭で思ったことはすぐに忘れてしまいますが、記録はずっと残ります。
以前の記録を読み返して、新たな発見に気付くことや懐かしさを覚えることも、よいことなのではないでしょうか。
さらに、セルフモニタリングでママの行動や感情を可視化することは、夫に母親業の大変さや本質を理解してもらうことにも役立ちます。
女性と男性が話し合いをすると、どうしても目的がずれたり感情の表し方が違ってしまったりして、ケンカになりがちです。
何を伝えるべきかが分からず、感情的になってしまうことも多いでしょう。
セルフモニタリングを実践することで、それを男性にも理解しやすいように提示することができるのです。
家事や育児の妥当な分担のためにも、ママがいかに大変な思いをしているのか、表に書き表してみるとよいのではないでしょうか。
さいごに
今回は、産後のメンタルに不安を抱えるママや、子育てにつらさを感じているママにセルフモニタリングをご紹介してみました。
セルフモニタリングや日常行動記録、コラム法などちょっと難しい言葉が並んで「面倒」「難しそう」などと考えてしまうのはもったいない!
要は、
- できごと
- 状況
- 感情
- その理由
などを書き出して客観的に読み直すと、全然違った捉え方ができるよ、というお話です。
これは、ビジネスやダイエット、アスリートのメンタルトレーニングなどに用いられたりもするのですが、私は子育てにこそ使うべきものだと考えています。
それは子供のためでもあるし、ママのためでもあります。
ママが自分自身の心を深く理解できると、子育てはとっても楽に楽しくなるものだと思いますよ。