産後の女性の悩みの上位に食い込んでくる「むくみ」。
妊娠後期から徐々にひどくなってくるものですが、出産した後もすぐに解消されず悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
妊娠するまでむくみには縁がなかった人、むくみの感覚が分からない、という人も、妊娠や出産をきっかけに不快感に悩まされることは多いものです。
今回は、産後になかなかむくみが解消されない人や、むしろひどいむくみとなって苦しんでいる方に向けて、解消法と対策をご紹介します。
産後のむくみがひどい!そのメカニズムとは
妊娠後期から産後にかけてむくみがひどくなる人は多いですが、そのメカニズムを知っていますか?
なぜむくみというつらい症状になって現れるのか、その仕組みを知ることが解決への第一歩となります。
1. むくみのメカニズム
むくみとは、細胞と細胞の間に水分が溜まりすぎている状態のことをいいます。
(この場合の水分とは、間質液とよばれるものです)
心臓からのポンプによって、血液が全身の動脈を通って送られていきます。
そして血液は毛細血管まで届き、血管から間質液が染み出てきます。
その間質液は当廃物などを回収して、静脈やリンパに再吸収されます。
(これが新陳代謝という働きです。)
そしてまた心臓に戻り…繰り返します。
普通、間質液の量はどこにどの程度分布するかが決まっていますが、何からの理由によって細胞と細胞の間の水分量が増えてしまうと、体の表面からも「むくみ」の症状として分かるようになります。
2. 産後の血液
妊娠中は、ママの体の血液量が通常の1.5倍になると言われています。
無事出産を終えてしばらくすると元の状態に戻るのが普通ですが、上手く水分の排出が行われずに必要のない水分が体の中に溜まったままになってしまうことも少なくありません。
また、産後は授乳のためにたくさんの水分を必要とします。
母乳も血液から作られているので、血液量が増え、その分水分量も増えます。
体が勝手に「体に水分がないとおっぱいをあげられない」と判断し、水分を溜め込もうとしてしまうことも原因です。
まだまだ授乳リズムや授乳量も安定しない産後1~3か月は、むくみもひどくなりやすいと考えられるでしょう。
3. 出産の反動の可能性
出産時、血液や羊水など体の中の水分が一気に排出されます。
今まで体内にあった水分が一気になくなることで、体が危機感を覚えて水分を確保しようと溜め込んでしまうこともあります。
産後は体内の水分が減ったり増えたりバランスが一定に保ちにくい状態なので、余計にむくみがひどくなってしまうのです。
産後、むくみがひどくなる人の特徴
産後の水分バランスが乱れるのは、どの産婦さんでも同じ。
それなのに、なぜむくみがひどくなってしまう人と、そうでない人がいるのでしょうか?
産後の体調や、不調の出かたは人それぞれです。
しかし、その違いを考えることで解決策が見えてくることもあります。
1. 妊娠中に安静指示が出ていた人
妊娠中から適度に軽いウォーキングなどをすると、むくみ対策になると言われています。
しかし、妊娠経過によって安静指示が出ていることもありますよね。
切迫早産などで安静指示が出ている人や、入院を余儀なくされるケースなどは、足腰の筋肉がかなり弱まっています。
脚の筋肉は前身の血流を促す働きを持っているので、妊娠中に安静生活をしているとむくみがひどくなります。
筋肉量はすぐには回復しませんので、産後も引き続きひどいむくみの症状に悩まされてしまうことに。
2. 運動不足を自覚している人
安静指示などがなくても、運動不足を自覚している人や運動の苦手な人、後期つわりなどで体調を崩していた人なども要注意です。
運動不足はむくみの大きな原因のひとつ。
血流が悪くなり、余分な水分も停滞しやすい状態になっています。
3. 妊娠中体重が増えすぎてしまった人
妊娠中に太りすぎてしまった人は、妊娠後期~産後のむくみがひどくなりやすいでしょう。
妊婦さんの太り過ぎは、むくみの悪化や高血圧などを引き起こします。
妊娠後期になって突然妊娠高血圧症になってしまうことも珍しいことではありません。
体重の急激な増加によってむくみが発生し、産後もそれが続いてしまうことも考えられます。
4. 貧血気味の人
出産後は、貧血からくるむくみにも注意が必要です。
貧血は血液循環が上手くいかなくなる原因となります。
- 出産による多量の出血
- 母乳の分泌
- 慣れない環境への不安やストレス
- 疲労・睡眠不足
などなど、産後は様々な原因により、貧血になりやすくなります。
血行が悪いと体の水分循環が正しくできないので、むくみも起こりやすいでしょう。
5. 冷え症な人
冷えもむくみの原因になります。
体が冷えていると血行不良を引き起こすので、血液循環が滞りむくみます。
元々冷え性な人や、冬場の出産はむくみも起こりやすいので注意しましょう。
また、暑い夏の出産でも肌の露出が多くなり、エアコンに当たることで隠れ冷え性になっていることがあります。
むくみが気になるときは、体が冷えていないかチェックしてみるようにしましょう。
産後のむくみ解消法
ここでは、忙しい産後のママでも簡単にできるむくみ解消法をご紹介します。
1. 授乳の姿勢に注意する
産後はどうしても授乳をしなければならないので、長治時間同じ姿勢になりがちです。
座りっぱなしの姿勢はむくみ悪化させます。
むくみがひどいときは、赤ちゃんを抱っこして立ったまま授乳してもよいと思います。
赤ちゃんは軽いですし、立って少し揺らしてあげながら授乳しても大丈夫。
必ずしも毎回同じ姿勢で、座って授乳しなければいけないということはありません。
足が圧迫されてつらいときは、姿勢を変えたり体勢を変えたり工夫しながら授乳してみては。
2. 食事の塩分を控えめにする
むくみの原因になる「塩分の多い食事」は控えましょう。
産後数カ月はインスタントや味の濃い外食はなるべく避けたいところ。
母乳の質を高めるためにも、薄味の和食がベストです。
水分をしっかり摂りつつ薄味のヘルシーメニューにすることで、母乳の質も量も確保することができ、同時にむくみやカロリーコントールも期待できます。
たまにはがっつり濃い味の食べ物が食べたくなりますが、むくみが落ち着くまでは極力我慢したほうがよいかもしれません。
3. カリウムを含んだ食材を食べる
カリウムは、体内の水分を排出させる働きを持っている栄養素です。
食事のメニューに積極的に取り入れると、毒度や老廃物を含む水分が排出されやすくなります。
- 豆味噌
- 納豆(ひきわりが◎)
- パセリ
- アボカド
- こんぶ
- ほうれん草
- きゅうり
- かぼちゃ
など大豆製品や海藻、夏野菜などが多いです。
主に和食系の食材が多いので、健康的な和定食を心がけると自然にカリウムが豊富な食事内容になるのではないでしょうか。
4. 軽いストレッチやエクササイズをする
産後はあまり無理な動きはできないので、軽い産褥体操(さんじょくたいそう)やストレッチをしてみましょう。
長時間同じ姿勢であることや、足の筋肉をほとんど使わないことでむくみは加速してしまいます。
なるべく体を動かして、血流を停滞させないようにしてみます。
体を動かすことはむくみだけでなく、脳や自律神経などにもプラスの影響を与えます。
産後ダイエットの効果もアップしますので、適度な運動で血流を促進させましょう。
5. 着圧ソックスの使用
着圧ソックスはむくみ解消の定番アイテムですよね。
筋肉に着圧ソックスで圧をかけ、鈍くなっている筋肉を刺激し血流を促すという目的があります。
産後も産院で着圧ソックスを進められることも多く、医療用のものもあるのです。
ドラッグストアで売られているものでも種類が多く比較的安値ですが、医療用は値段も高く病院しか買うことができません。
ただ市販品でじゅうぶん効果があるという人もいますが、中には医療用のものでないと効果が感じられないことも。
圧の違いの他には、市販品と医療用での差はありません。
自分に合ったものが選べるという点では、医療用のほうが当然おすすめです。
足首 20~30hPa
ふくらはぎ 10~20hPa
太もも 5~15hPa
このくらいの範囲内で、自分の好みの圧を選ぶとよいのではないでしょうか。
6. 足湯
産後最低1カ月間は、湯船への入浴ができませんよね。
冬場はシャワーだけだと寒いし、冷えも加速します。
そこで、足湯を定期的に行ってみましょう。
大きめの洗面器やバケツにお湯を張る…という方法は、すぐにお湯が冷めるのでおすすめしません。
お風呂場に椅子を持ち込んで、浴槽にそのまま足を浸けた方が効果的です。
ふくらはぎや膝のほうまで温めることができるので、冷えやむくみがとても楽になります。
夏場でも肌の露出やエアコンの風邪で体が冷えているので、足湯は積極的に行いましょう。
7. 足を高くして寝る
足のむくみが気になるときは、足を高くして横になのが鉄則です。
使わない布団やまくらなどを積んで、タオルケットなどでくるみ大きなクッションのようにします。
(大きめのクッションにしないと安定しないので、眠ったあとに足が落ちてしまいます。)
妊娠中に抱き枕を使用していた人は、それを足の下に置いて寝てもOK。
眠るときだけでなく、日中横になって休むときも足を高くして休憩するように心がけてみましょう。
むくみを作らないための予防方法
むくみの解消法と同時に、予防方法も知っておくと安心です。
一度解消しても、また気が付くとむくみが出てきてしんどい思いをすることがあります。
そうならないために、普段から注意しておくべきポイントを抑えておきましょう。
1. 体を温める飲み物を選ぶ
食べ物や飲みの物チョイスはとても大事です。
余分な水分を排出させ、血流をよくする効果のある物を選んで、日常的に取り入れるようにしましょう。
【むくみ予防の飲み物】
- ドクダミ茶
- 杜仲茶
- ハト麦茶
- ごぼう茶
- 柿の葉茶
上記のお茶は授乳中でもノンカフェインで安心なもの、さらにカリウムの含有量が多いものです。
たまにはコーヒーや緑茶などを飲んでもいいですが、カフェインの摂りすぎは赤ちゃんだけでなくママの体の冷えにも影響しますので飲み過ぎないよう注意しましょう。
2. お風呂のついでにマッサージ
むくみにはリンパを流すオイルマッサージなどが効果的。
でも、産後にオイルマッサージに通うことできる人ばかりではありませんよね。
自分でやるにしてもちょっと面倒だし、そもそも時間もありません。
そこでお風呂で体を洗うときに、ゆっくり足先から上に向かって、揉みだすようにマッサージしてみましょう。
- つま先
- かかと
- 足首
- ふくらはぎ
- 膝裏
- ふともも
と、下から上に押し上げるようにしてマッサージします。
心臓に遠い方から近い方へ、水分の循環を助けてあげるイメージです。
あまり細かいことは考えず、ついでに揉んであげるだけでOK。
やるのとやらないのとでは、けっこうな違いが出ますので試してみてくださいね。
3. 暇なときにちょこっとツボ押し
むくみの解消や予防に効果的なツボ、というのもあります。
ツボ押しは即効性というよりも、予防効果が主で継続も大事です。
ちょっと暇なとき、思い出したときにツボを刺激してあげると予防になりますよ。
□三陰交(さんいんこう)
内側のくるぶしから、指4本分上部分です。
冷え生理痛、更年期障害など女性特有の悩みにも効果的なツボと言われています。
□湧泉(ゆうせん)
足の裏の土踏まずの上方向にあります。
つま先を伸ばしたときに、いちばん窪む部分が湧泉です。
冷えや疲労などに効果のあるツボになります。
むくみと産後ダイエットの深い関係
むくみは、痛みや重くて動かしにくいなどの不調だけでなく、産後ダイエットにも大きく関係しています。
産後、なかなか体重が減らない焦りや、このまま戻らかったらどうしようと不安な気持ちになる人もいるでしょう。
産後1カ月前後で自然にむくみが解消し、体重も徐々に減っていくことが多いです。
しかしむくみやすい体質の人や、筋力のない人などは体重も落ちにくく、産後ダイエットへの不安を抱えやすいでしょう。
産後は、脂肪よりも余分な水分に着目してケアしていく方が効果的です。
むくみがある状態ということは、血流が悪くなっている証拠。
血流が悪いということは、代謝が落ちていてエネルギー消費量が少ないということです。
痩せるためにはまず「血流の良い痩せやすい体」を目指すことからはじめると、効果が表れやすくなります。
産後のむくみとママの暮らし
産後のむくみはよくある不調ではありますが、経験した人にしか分からないつらさがありますよね。
私は切迫早産で3か月以上安静生活をしていたので、妊娠中から産後までずっとむくみと格闘していました。
運動不足や筋力の低下が、むくみを加速させてしまったのだと思います。
足を床に付くだけでもなんだか苦しい。
上手く足が曲がらないので、歩くのもヨタヨタ…という感じでした。
産後は少しずつ動き回っていたので、日中はだいぶ調子が良かったのですが、寝起きや疲れの溜まってくる夕方はつらかったです。
赤ちゃんのお世話や家事も、体が重くて動かしにくいのでとても億劫に感じるんですよね。
脚がとても太くて不格好で、「このまま元に戻らなかったら…」と怖くなることもありました。
でも、産後2カ月になるころにはむくみは自然と消え、体の重さや関節のこわばりもよくなりました。
産後、ダイエットを始めようと思えたのもこのころ。
体が思うように動きはじめ重さがなくなってきたので、運動をする気持ちも徐々に湧いてきました。
ただし、もしあまりにもむくみがひどくて、ご紹介したような対処法で効果がない場合は、出産した病院に相談してみてもよいと思います。
長く続くむくみは病気や異常のサインである可能性も否定できません。
一般的にむくみは産後1カ月で解消すると言われています。
個人差や妊娠経過にもよるので、多く見積もって産後2カ月を目安に様子を見てみるとよいのではないでしょうか。
さいごに
産後のつらいむくみ、その対処法と予防方法をご紹介してきましたが、いかがでしたでしょうか。
育児や家事で忙しい中、自分のケアまで手が回らず、むくみの苦しさを我慢したりしている方も少なくないと思います。
しかし、むくみの症状があると体を動かすのが普段の倍大変に感じます。
家事や育児を楽にこなすため、また産後ダイエットのためにもむくみケアはしっかりやっておきましょう。
- 冷え対策をする
- 食事や飲み物を工夫する
- 軽い体操やストレッチ
- 足を高くして寝る
- ツボ刺激
- 着圧ソックス
これだけ試せば、概ね快方に向かうと思いますよ。
軽やかに動ける自分をめざして、少しずつケアしていきましょう!
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