パリから電車で約1時間。
フランス中央部にあるロワール渓谷は、ロワール川によって形作られました。
その美しさは、時を越えて人々を魅了しています。
かつてこの地は、フランスの王侯貴族の移住地として栄えて、300を超える古城や庭園が競うように築かれました。
その中でも絶対に見ていただきたい、おすすめの美しいお城を厳選。
日常の生活から離れて、ゆっくりとした時間を味わいに、フランスの古城へ出かけてみませんか。
フランスルネッサンスの最高傑作 シャンボール城
その優雅さ、壮大な外観から「世界の名城」でも知られる「シャンボール城Chateau de Chambord」。
ディズニー映画『美女と野獣』のモデルにもなったお城です。
1981年から2000年まで、この城だけが世界遺産に登録されました。
しかし2000年以降は、このお城を含む一帯、メーヌ川からシュリー=シュル=ロワールまでの渓谷が世界遺産です。
登録名は「シュリー=シュル=ロワールとシャロンヌ間のロワール渓谷」です。
ロワール渓谷にはいくつもお城がありますが、その中でも「シャンボール城」は最大の規模を要します。
フランソワ1世が狩猟のために使用していたこのお城は、ヨーロッパ最大のシャンボール公園の中にあります。
そこには今でも鹿や猪などの野生の動物たちが住んでいます。
500年の歴史を誇るシャンボール城
フランス中部、湾曲するロアール川とその支流シェール川にはさまれたソローニュの沼地シャンボール。
この地に、1519年に宮殿として建てられました。
若きフランス王フランソワ1世が、一年の間、ほんの数週間だけ過ごしたお城です。
建築様式は、フランチ・ルネサンス様式。
古典的なイタリアの構造に、中世フランスの様式を取り入れた独特なスタイルです。
建築家はドメニコ・ダ・コルトナですが、レオナルド・ダ・ヴィンチがアイディアを提供したと言われています。
中央の本丸に4つの塔から成り、部屋の数は部屋が440室、暖炉が365台、そして階段が84本あります。
ヴォールト建築、かまぼこ型の形状をした天井のある直線の廊下が4本交差して、十字を作っているのが印象的です。
デザインに凝ったのはいいけれど、住むにはつらいお城
「シャンボール城」は、建築デザインを最優先に考えて建てられたお城です。
そのために、住むにはつらいお城となってしまいました。
暖房がほとんど効かないのです。
暖炉はたくさん設置されているものの、この数では室内を暖めるには不十分でした。
また、吹き抜けの構造は見た目はいいものの、常に風が抜けるので、寒かったようです。
狩猟にはいい土地でしたが、周りには集落などがなくて、食料を手に入れるのに一苦労でした。
そのため、調度品が備えられずに、訪問のたびに、家具や壁掛け、食器などをすべて持ち込んでいました。
組み立て式の家具が、その当時はあったのです。
見どころ
・「その外観、ロワール川の対岸から見てほしい」
まずは、このお城は遠くから眺めていただきたいです。
特に、ロワール川の水面に反射する姿と一緒にお城を見た時の壮麗さ。
ため息が出てしまいます。
その絵のような美しさをご堪能ください。
・「数え切れないほどの麗しい塔を頂いた屋根」
このお城の壮大さに目を見張りますが、特にその屋根には釘付けになってしまうでしょう。
その数365本もの柱が、屋根を飾ります。
その一つ一つに、巧緻な装飾が施されていて、しかも暖炉の煙突だというのですからびっくり。
屋上に上がることができるので、この精緻な作りの塔を、間近でじっくりとご覧ください。
また屋上からは、お城を囲む公園を一望できるので、屋上に上られることをおすすめします。
・「非対称的なデザイン」
お城を正面から見ると、左右対称の均一の取れたお城に見えます。
しかし細部に目を凝らすと、シンメトリーではないところがたくさんあるのが分かります。
たとえば、本丸を囲む四本の塔には、窓が設置されていますが、この窓も対照的な配置ではありません。
当時のルネッサんス様式では考えにくいもので、このお城独特なスタイルです。
お城の翼部分には、それぞれ独立した部屋があり、ちょうどアパートの一室のようです。
そこに置かれている暖炉、窓や塔の位置なども、非対称的な設計です。
・「二重らせん階段」
本丸の中心にある二重らせん階段は「シャンボール城」のハイライトで、広々として気持ちのいい造りの階段です。
レオナルド・ダ・ヴィンチが設計したと言われていますが、残念ながらその確証はありません。
それはともかくこの階段の面白いところは、二つの階段を使えば、上る人と下りる人がすれ違わずに三階まで行けることです。
・「繊細な彫刻がいたるところに」
お城に近づけば、細かな彫刻がいたるところに配置されていることに、気づかれるでしょう。
外壁や、屋上の柱。
城の中に入れば、天井の飾り。
そこには、フランソワ1世の紋章が刻まれています。
「知事の部屋」や城中心にある「ルイ14世の部屋」。
どの部屋をとっても、それぞれに特徴があり、同じものがありません。
ちなみに「ルイ14世の部屋」には、17世紀のタペストリーがかけられて、シャルル10世が所有していたビリヤード台などが展示されています。
遠くから眺めてもよし、近くによって細部を検証するもよし。
「シャンボール城」は見どころが満載です。
シャンボール公園
5,440ヘクタールというヨーロッパにおいて最大の公園です。
自然保護の観点から、禁猟区域があり、また狩猟できる動物の数にも制限を設けています。
また城前には、14年もの年月をかけて調査した18世紀当時のフランス庭園が再現されています。
その工事は昨年2017年に終了して、その費用は約4億4000万円もかかったそうです。
DATA
現在地:Chateau, 41250 Chambord
開門時間:毎日。冬季10月1日~3月31日10~17時/夏季 4月1日~9月30日9~18時
閉門日:1月1日、2月4日、12月25日
入場料:大人13ユーロ/18から25歳11ユーロ/子供無料
アクセス:電車なら、パリのオステルリッツ駅からオルレアン駅を経由してブルワ駅で下車。または、モンパルナス駅からツール駅を経由して、ブルワ駅で下車。約2時間弱。ブルワ駅からバスかタクシーで約30分。
HP:https://www.chambord.org/en
独特の空間が広がる シュノンソー城
シェール川の水面に映える美しいお城「シュノンソー城(Chateau de Chenonceau)」。
繊細でいて、華奢な宮殿のような古城です。
ヴェルサイユ宮殿に次いで、二番目に観光客が多いというのも頷けます。
女性たちの城「シュノンソー城」
代々王室にゆかりのある女性たちが城主を努めたことから、「貴婦人たちの城」とも呼ばれています。
1515年から1521年にかけてシャルル8世の侍従トマス・ボイエが邸宅として建設しました。
その後、フランス国王フランソワ1世に献上されると、王室にゆかりのある女性たちが住むようになります。
永遠の美女としても名高いディアーヌ・ド・ポワティエは、アンリ2世の愛妾。
カトリーヌ王大后、フランス王アンリ3世の王妃ルイーズ・ド・ロレーヌ=ヴォーデモンなど錚々たる顔ぶれが暮らしました。
ちなみに、この城の特徴のひとつ、シェール川にかかるアーチ形の橋は、ディアーヌ・ド・ポワティエによって建築されました。
城として復活を遂げる
1720年にはブルボン公ルイ・アンリがこの城を買い取ると、調度品をヴェルサイユ宮殿に売却していきます。
城として活気がなくなりましたが、地所の所有者クロー・デュパンの妻ルーズ・デュパンは、この城を生き返らせました。
フランス革命の立役者たち、啓蒙思想家ヴォルテールやモンテスキュー、ジャン=ジャック・ルソーなどをこの城に招待します。
またフランス革命のときは、革命軍の破壊活動から城を守りました。
女性によって繁栄し、女性によって守られた城「シュノンソー城」は、歴史の観点から見ても興味深い城です。
見どころ
「シュノンソー城」は王家の居城として使われていたため、貴重な調度品や美術品が数多く残されています。
その中でも、城の各所に飾られる絵画やタペストリーのコレクションは必見です。
・「ギャラリー」
シェール川にかかる「ギャラリー」は、このお城を特徴づけるシンボルともなっています。
1576年にカトリーヌ・ド・ネディチがこの橋を改築して、ギャラリーを建てさせました。
長さ60メートル、幅6メートルのギャラリーには、18もの窓があるので、明るい日差しに満たされています。
黒と白の市松模様のタイル張りの床と梁のある天井が印象的で、栄えていた当時は、数々の舞踏会も開かれました。
・「マルクの塔」
15世紀にトマス・ボイエがこの城を建てたとき、その以前にあったマルク家の要塞の一部を残しています。
それが、写真左側にある丸くて太い塔、「マルクの塔」です。
ボイエはこの塔をルネサンス様式に造り替えて、「シュノンソー城」と見事に調和させました。
・「ディアーヌ・ド・ポアティエの寝室」
アンリ2世の愛妾ディアーヌ・ド・ポアティエの寝室は、天蓋つきの青いベッドが印象的です。
暖炉の上には、ディアーヌの肖像画も飾られています。
また窓際には、小さな図書室も完備した書斎もあります。
・「ルイ14世のサロン」
太陽の王ルイ14世の居間は、まさに最盛期だったころの様子が伺えます。
赤い壁に、サラマンダーと白いたちの紋章で飾られた暖炉が、華やかさに花を添えます。
暖炉横には、ルイ14世の肖像画は、見事な木製の額縁で飾られています。
4つの大きな木材を組み合わせて作られたのは、ルポートルの製作です。
額縁までもが芸術作品になっているというのが、この部屋の豪華さを象徴しているでしょう。
またコンソール上部には、ルーベンス作「幼子イエスとバプテスマのヨハネ」もかけられています。
・「カトリーヌ・ド・メディシスの寝室」
ルネッサンス期特有の天蓋つきのベッドに、壁を覆いつくすタペストリーが印象的な寝室です。
こんな部屋で落ち着いて眠ることができたのでしょうか。
そんな心配をよそに、この贅沢さは目を見張るものがあります。
・庭園
お城を挟むようにしてある二つのフランス式庭園があります。
マルク塔側にあるのが、カトリーヌ・ド・メディシス庭園。
その反対側にあるのが、ディアーヌ・ド・ポアティエ庭園です。
カトリーヌ・ド・メディシス庭園には、中央に池があり、ここから西のファサードがよく見えます。
庭園内には、ドーム、迷路園、農場などを要し、その広さは80ヘクタール近くにもなります。
ディアーヌ・ド・ポアティエ庭園の中央には噴水があり、花壇越しから見るお城は、その美しさを競うかのようです。
DATA
現在地:Chateau de Chenonceau, 37150 Chenonceaux
開館時間:毎日。
9:30からオープンしているが、閉館時間は時期によって異なるので、事前にチェック必須。
大まかな閉館時間は、閉館時間は夏季が20:00、冬季は17:00。
入場料:大人14ユーロ/7から18歳までの子供11ユーロ/7才以下無料(日本語のオーディオガイドあり)
アクセス:パリから電車で約2時間弱。
パリ・モンパルナス駅から約一時間、TGV線でサン=ピエール=デ=コール駅下車。
TER線に乗り換えて、トゥール=シュノンソー駅で下車。ここから徒歩5分ほど。
HP:https://www.chenonceau.com/en/
見学ガイド、チケット情報、アクセスについては、日本語もあり。
フランス王家の城 ブロワ城
パリを基点にすると、ロワール渓谷の古城めぐりの入り口に位置する古城「ブロワ城(Blois)」。
ヨーロッパでも名城と知られていて、7人のフランスの王が住んでいました。
かのジャンヌ=ダルクが1429年、英国に向けて軍を出発させる前に、大司教によって祝福を受けたのもこのお城です。
中庭を囲む4つの城は、すべて別の時代に建築された珍しい構造のお城です。
政治的首都としての歴史をもつ「ブロワ城」
「ブロワ城」はブロワの町の中心にあり、13世紀から17世紀までに建てられた建物が混在しています。
ルイ12世の時代、「ブロワ城」は王国の政治的首都として機能していました。
そのためルイ12世は、この城を居を構えます。
城の三つの翼
ルイ12世は、16世紀のはじめにこの城を再建して、赤いレンガと灰色の石で翼を造らせました。
城の入り口となる場所に位置しています。
また、ルネサンス様式の庭園も造らせます。
その14年後、フランソワ1世が新しい翼を建設させます。
この翼はイタリア様式の影響が強く、中央には有名な彫刻の美しい八角形の螺旋階段を設置。
図書館も備えました。
17世紀には、ルイ12世の翼と向かい合う位置に、オルレアン公が新しい翼を建設させます。
中央部分は3階層になり、ドーリア式、イオニア式、コリント式と異なる様式が一階ごとに用いられる珍しい構造です。
しかし計画は途中で頓挫して、未完成のまま残されました。
その後130年以上、城は放置されて、革命期には略奪、王家を象徴する彫刻や紋章は破壊されました。
見どころ
・「異なる三つの翼」
異なる特徴を持つ3つの翼の見比べていただきたいです。
城の内庭から見る、それぞれの異なる様式を備えた建物が1つにつながっている光景は、他に例がありません。
城の歴史を踏まえて、この城の構造の面白さをご堪能ください。
・「八角形の螺旋階段」
ルネッサンス期の最高傑作と名高い八角形の螺旋階段。
フランソワ1世翼に、外側に張り出すようにして造られています。
要人が訪れた際、バルコニー部分に宮廷の人々が並び出迎えるという演出にも使われたそうです。
階段の各所に、フランソワ1世のシンボルであるサラマンダーが装飾されています。
サラマンダーを探しながら階段を上るのもおもしろいかもしれません。
フランソワ1世翼全体も、初期ルネッサンス様式です。
その内部には、城塞の頑丈な城壁がそのまま組み込まれています。
また窓の位置は、シャンボール城のように、シンメトリーではない点は、ルイ12世の翼と違います。
・「美術館」
現在、ブロワ城内は美術館と歴史博物館になっています。
王族の私室や応接間には、壮麗な装飾が施されています。
展示されている調度品や絵画などから、当時の王族の暮らしぶりを思い浮かべることができるでしょう。
ブロワ城は35,000点以上もの芸術品を保管しています。
これらの芸術品は、美術館に改装されたルイ12世の翼と、フランソワ1世翼に常時展示されています。
城内ツアーのオーディオガイドは日本語はありませんが、パンフレットを見ながら自由に見学ができます。
DATA
現在地:6 Place du Chateau, 41000 Blois
開館時間:時期によって異なるので、事前にチェックは必須。
夏季は9:00~18:30頃、冬季は10:00~17:00
入場料:大人12ユーロ/6~17歳6.50ユーロ
アクセス:パリから約2時間弱。パリ・オーステルリッツ駅からブロワ駅で下車。徒歩約10分。
HP:http://jp.chateaudeblois.fr/ 日本語あり。
庭園の美しさは随一! ヴィランドリー城
ルセッサンス様式を取り入れた古城で、もっとも典型的とも呼べるお城が「ヴィランドリー城」です。
このお城は、お城そのものよりも、庭園が有名です。
オリジナルのデザインは、すでに14世紀にありました。
所有者が変わっていく中で、公園に作り変えられたりしたのですが、荒廃していきます。
ところが、20世紀の初めに所有者となった現オーナーによって、庭園は見事復活を果たしました。
ロワール渓谷の中では現代的なヴィランドリー城
このお城は、16世紀、フランソワ1世の下で財務大臣をしていたジャン=ル=ブルトンによって建てられました。
ルネッサンス期建築を基調にして、白い外壁が印象的なお城です。
1750年代には修復も施されて、ロワール渓谷の中では、比較的新しい城の1つです。
フランス革命のときに、ブルトン家から土地は没収。
19世紀の初めに、ナポレオン1世が弟のジェローム・ボナパルトのために購入します。
そして1906年、ヨアヒム・カルバロが買い取り、巨額の富をはたいてこの城を庭園を造りました。
1934年、フランスの文化財に指定されました。
見どころ
・「庭園」
ついため息をついてしまうほど、丸や四角の幾何学模様が美しい庭園です。
この装飾庭園は4つに区切られて、あらゆる色のバラが愛を表現しています。
水の庭園では、噴水と彫刻で、訪れる人々を楽しませてくれます。
太陽の庭園では、世界中から取り寄せられた花々が咲き、果樹を実らせています。
この迷路と化した庭園を抜ければ、お城に到着です。
庭園全体では6ヘクタールの広さを誇り、花壇だけではなくて、野菜やハーブを植えた菜園にもなっています。
・「城内」
各部屋には彫刻を施した繊細な家具類が並び、壁には年代もののタペストリーがかけられ提案す。
オリエンタルサロンは、天井は金箔装飾が施されていて、エレガントな雰囲気に包まれています。
注目は、「イスラム天井」。
マクダ公爵の宮殿が1905年に取り壊されるときに、その宮殿にあった四つの天井のうちの1つが展示されています。
残りの三つの天井は、ルーブル、サンフランシスコ、マドリードにある美術館に保管されています。
フランドルのすばらしい油絵もギャラリーにありますので、ご覧ください。
DATA
現在地:Chateau et Jardins de Villandry, 37510 Villandry
開館時間:月ごとに異なり、夏季がほぼ9時から18時/冬季がほぼ9時から17時。
見学料金:城館と庭園 大人11ユーロ/8~18歳 7ユーロ
庭園のみ 大人 7ユーロ/8~18歳 5ユーロ
アクセス:パリから約2時間。トゥール駅またはピエール・デ・コール駅で下車。城専用の車で約20分。
HP:http://www.chateauvillandry.fr/en/
ロワール川を見渡す城 アンボワーズ王城
ロワール川を見下ろす岬に建つ「アンボワーズ城」は、歴代のフランス王の居城でした。
幾何学模様が美しいフランス式の庭園は、この城が発祥とされています。
ゴシックやルネッサンス期の調度品も、多く残されています。
15世紀から16世紀にかけて隆盛を極めた「アンボワーズ城」
11世紀に要塞が建てられていますが、その後、拡張と改修が施されていきます。
1434年にフランス国王シャルル7世が城主になってからは、歴代のフランス王に愛される城となりました。
シャルル8世はここで生まれて、15世紀には、庭園をイタリア風の庭園に造り替えました。
これが、フランス式庭園の始まりとされています。
歴代の王に権勢を誇った女性たちの住居
フランソワ1世は4歳のときにこの城に来て、青春時代をここで過ごしました。
1515年、レオナルド・ダ・ヴィンチをクロ・リュセに招聘します。
実は、この城とクロ・リュセ城は、地下道で結ばれているのです。
ダ・ヴィンチはサン・ユベール礼拝堂に埋葬されますが、その礼拝堂はこの城に隣接しています。
アンリ2世と王妃カトリーヌ・ド・メディシスの子供たちに、後にスコットランド女王になるメアリー・スチュアートもこの城で育てられています。
しかし王権が弱まっていくのと同じく、この城は17世紀には衰退の道をたどります。
放置状態になっていた城は、フランス革命期にはかなりの部分が破壊されます。
その後、改修されたものの、またドイツナチスによって大きな被害を受けました。
見どころ
・「中世の要塞としての雰囲気のある城」
ロワール川沿いがシャルル8世がゴシック様式、奥側はルイ12世とフランソワ1世が増築したルネサンス様式の建物です。
城内には、ゴシック期の調度類などが展示されて、隆盛した当時の王たちの暮らしぶりがうかがえるでしょう。
・「サン・ユベール礼拝堂」
レオナルト・ダ・ヴィンチの墓碑があるサン・ユベール礼拝堂です。
モザイクガラスはふっくらと厚みがあり、立体的に描かれています。
ダ・ヴィンチに興味のある方には訪れたい場所のひとつでしょう。
ここから徒歩10分ほどのクロ・リュセとこの城で晩年を過ごすことになったダ・ヴィンチ。
王の側近として余興を考え、天体の動きを再現した巧妙な仕掛けが面白いフェスタ・デル・パラディソも創作しました。
・「ミニームの塔からの眺め」
イタリア式の美しい庭を散策されたら、ロワール川を望む眺望をお楽しみください。
この立地のため、庭園からの眺望は十分素敵なのですが、円筒の「ミニム塔」からの眺めは輪をかけて美しいです。
ロワールの景色が一望できて、癒しのスポットしてもおすすめです。
・「アンボワーズ村」
この城を訪れたのなら、合わせて散策を楽しんでいただきたいのが城下にあるアンボワーズの村です。
お土産やさんやお菓子屋さんなど立ち並び、フランス情緒が味わえるかわいらしい村です。
DATA
現在地:Montee de l’Emir Abd el Kader, 37400 Amboise, Frankreich
入場時間:月によって異なる。大まかに、夏季9時から19時/冬季9時から16時45分。
定休日:1月1日、12月25日。
入場料:大人11.70ユーロ/7~18歳7.80ユーロ
オーディオガイド(日本語)
:大人4ユーロ/7~18歳3ユーロ
アクセス:パリ・オステルリッツ駅から電車で約二時間、アンボワーズ駅下車。徒歩約20分。
HP: http://www.chateau-amboise.com/ja/ (日本語あり)
クロ・リュセ城とレオナルド・ダ・ヴィンチパーク
アンボワーズ城から400メートルほど離れたところにあるのが、「クロ・リュセ城」です。
別名「クルーの館」は、レオナルド・ダ・ヴィンチが晩年を過ごした城として知られています。
料理人のために建築された「クロ・リュセ城」
赤レンガの外観が美しい「クロ・リュセ城」は、1471年、フランス国王ルイ11世が自分の料理人のために建てさせた城です。
1490年には次の国王シャルル8世がその妻のために、この城を買い取ります。
フランソワ1世が幼少期を過ごし、姉のマグリッド・ド・ナヴァルが「エプタメロン」を執筆しました。
レオナルド・ダ・ヴィンチとクロ・リュセ
「ここで考えるのも、夢想するのも、働くのもあなたの自由だ」とフランソワ1世に言われたレオナルド・ダ・ヴィンチ。
1516年に、すでに60歳を過ぎていたダ・ヴィンチは、イタリアからこのお城に招聘されました。
弟子や友人と共に、生涯最後の三年間をこの城で過ごします。
レオナルド・ダ・ヴィンチの才能を買っていたフランソワ1世は、多くの都市設計や都市整備をダ・ヴィンチに託しました。
また彼は自然についても研究を重ねて、その成果を自ら描く絵画に反映させたのです。
イタリアから招聘された時の持参品の中には、ダ・ヴィンチの傑作として名高い「モナ・リザ」、「聖アンナと聖母子」、「洗礼者聖ヨハネ」も含まれていました。
見どころ
・「レオナルド・ダ・ヴィンチが暮らしていた空間」
クロ・リュセ城の見どころは、城の各所に見られるレオナルド・ダ・ヴィンチが暮らしていたころの面影です。
寝室にある天蓋つきのベッドやキャビネット。
居間には当時のままの状態で残されているゴシック式の家具やタペストリーを見ることができます。
また地下には、ダ・ヴィンチが発明した作品を再現して展示されています。
未来を見透かしていたかのようなダ・ヴィンチの豊かな想像力や発想力に、驚かされることでしょう。
・「レオナルド・ダ・ヴィンチパーク」
レオナルド・ダ・ヴィンチの生涯を通した活動を紹介するテーマパーク。
公園内には、ダ・ヴィンチの絵画やデッサン、また創作品や発明品など20点余りが、自然に溶け込むように展示されています。
DATA
現在地:2 Rue du Clos Luce, 37400 Amboise
入場時間:月によって異なる。大まかに、夏季が9時~20時/冬季10時~18時
入場料:大人 ハイシーズン15.50ユーロ/ローシーズン13.50ユーロ
7~18歳 ハイシーズン11ユーロ/ローシーズン10.50ユーロ
アクセス:アンボワーズ駅から徒歩で約25分。バスの運行あり。
HP:http://vinci-closluce.com/en
まとめ:ロワール渓谷の古城は優雅で華やか
フランスのロワール渓谷にある数多くの古城の中から、特におすすめのお城を紹介しました。
かつての城主の息づかいを感じながら巡る古城の旅は、私たちを中世ヨーロッパへと連れて行ってくれるでしょう。